プレヴェール『夜のパリ』の情景/st
 
そぼふる雨の四つ角で    突然あった懐かしい人と
時をわすれてみつめあう

街灯がやさしく照らす横顔に 愛の記憶がよみがえり
わすれていたはずの     ことばが生き返る

いつしか二人は       手に手を取って 
誰もいない公園につく

ポケットからとりだした   マッチばこには
わずかなあかりが残っていた

夜のなかで         三本のマッチを
一本ずつ擦ってゆく
 
はじめのは         きみの顔をすべて見るため
つぎのは          きみの目をみるため
最後のは          きみのくちびるを見るため
完全なくらやみは    
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