七月の忘れ物/たま
 
ベランダを覆いつくすケヤキの枝に
キジバトの巣がある
朝六時
キジバトの鳴き声で眼が醒める

ジュウイチジニキテクダサイ
ジュウイチジニキテクダサイ

十一時に?
どこへ?

夢の出口で
キジバトはたしかにそういった

梅雨が空けた
雨はもう降らない
乾ききった十一時の畑に立って
わたしは如雨露を探しつづけている
たっぷり六リットルの井戸水を呑みこんだ如雨露を
わたしはどこかに置き忘れたのだ
くったり萎れてしまったサツマイモやスイカの蔓を手繰り寄せて
わたしは如雨露の行方を模索する

産卵の翌日
キジバトのオスは巣に突っ立ったまま
たった一個の卵を
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