ふたたびの夏/そらの珊瑚
 

キミたちが産まれた七年前に何かあったのだろうか
大人になれなかった蝉は眠るように死んだのか
そう思案してみても夏は夏でしかない
特定の夏を取り出すことは出来ないし
それが答えなのだろう
昨日のことさえすでにおぼろだし
なんなら過去を都合良くすり替えることもできる
優しく残酷な手順で人は
悲しみだって上手に薄めてゆけるのかもしれない

せめて今日
息を吹き返した黒で文字を書く
書かないことで
刻まれていくこともあるけれど
書くことでしか
確かめられないこともある
風は
無言で
蝉は
啼くことで
この夏ごと
生きていることを共有しているように

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