おはよう/印あかり
今朝、サボテンを
ちょんと切って食べてみた
泣き腫らした目の下の
やわらかい、にくのあじがした
乳白色の空を
アラーム音が貫いた
悪魔が穏やかな寝息を立てている
レースの影が頬を泳いでいる
信号はずっと青で
磨かれた路面はちらちらと光った
見えない駅から
聞こえない電車の音
ひとつ、咳をした
このままワルツに背を向けて
熱っぽい鼻歌を歌う
おはよう。わたしの住む街
おはよう。わたしの好きな人
おはよう。
(おはよう)
サボテンの切り口から
ぷくりと透明な血が浮いた
夢中で舐めとっていたらいつの間にか
白い月は消えていた
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