シャツ/為平 澪
 
白いシャツを着せられていた 
脱ぐことも赦されなかった、そのシャツを 
声を発するごとに 
胸の真ん中についた、赤いしみ 
どんどん大きくなっていく、赤いしみ 
   (人とすれ違うごとに 
   (人の隙間から見えた始まりと終わりに 
   (人を見失うたびに 
出会った声と同じだけ 見送る夕焼けたちは 
胸の真ん中で もっと大きな夕陽になって 
赤く燃えては 沈んでいった 
誰のシャツを私は着せられていたんだろう 
誰の夕陽を抱えて生きていくのだろう 
そして 一体、このシャツを 
誰になんと言って 渡せるだろう 
シャツを赤くにじませて 
私はどこに向かって いつまで 
歩いていかねば ならないんだろう
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