ホームにて/レタス
じりじりと西陽を受けて
眩暈を感じたぼくは
電車に飛び込み
死んでしまおうかという衝動にかられた
全てを捨てたなら楽になれるのだ
鰻を食べて満足そうな妻の横顔を見たら
涙が滲んできた
電車がゆっくりと進入してくる
どうしよう…
飛び込むか
留まるか…
指先が震え
眼が眩む
妻だけには血だらけの肉片は見せたくない
鎖に繋がれた心も肉体も
自分だけの物ではない
ここで輪廻の鎖を断ち切らねば
来世も同じことが続くのだ
静かに潮が引くような死を待とう
独りではないのを感じた午後
明日の夢を見よう
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