ブルートレイン/レタス
あの頃は
時間だけがあって
財布は空っぽだった
アルバイトで貯めた金をはたいて
上野駅で夜間急行に乗った
ありったけの荷物を載せて
みんな北へ帰るらしい
座席が無くて
ウロウロしていたら
同じ世代の女の子が
此処空いていますよ
と
言ってくれた
何を話すことも無くて
夜中の列車は北へと走る
仙台でしばらくの停車
自動販売機で買った缶コーヒーを
目覚めた彼女にひとつ
鳶色の瞳が美しかった彼女
電話番号を交わし
盛岡で別れの手のひらを振り
旅を続けたぼくは
遠野の野辺を駆け巡り
林檎の樹の下で
野獣のように吠えまくった
狼のように
夜を切り裂き
俺は吠えた!
帰京
狼になれなかった俺は
まだ此処にいる
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