小品〜三重奏/ヒヤシンス
今宵森の中の静かなアトリエでチェロを弾く君。
君は自分の色彩を確かめながら求めているのだ。
私は君の唯一の客。
私も君のチェロの音色を聴きながら自分の色彩を求めている。
私のヴィオラは久しく音が出ない。
君と私、共に一度失った色彩を今再び取り戻そうか。
今宵の満月がうっとりと空に浮かんでいる。
森の木々はひんやりとした風に流れている。
君の小さなアトリエでは仄かな珈琲の香りが充満している。
描きかけのキャンバスには名も知れぬ花々が君の匂いを漂わせている。
私はその空間の邪魔にならぬようテラスに出て珈琲を啜りながら煙草を吸う。
群青色の夜空に君の
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