その男 どの男/……とある蛙
 

その男
生まれたときは貧相で、猿にも似た面立ちで
決して可愛い泣き方もせず、

その男
幼児となって生意気に
おさがりは嫌だと駄々をこね

その男
友も作らず師も知らず
世話をかけるのは父母ばかり

その男
そのうち母死に父も死に、唯一好きな姉も死に
妻死に 最後は一人きり



その男のその昔
親父の八ミリに写っている
誰が写したか親父と二人
満面の笑みを浮かべていたが、
親父に髪を引っ張られ
味噌っ歯をむき出しで痛がって、
そのまま別の場面へ転換

その男のその昔
いつまでたっても
僻みっぽく、友人のふりをして仲間入り
知らず知らす
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