その男 どの男/……とある蛙
その男
生まれたときは貧相で、猿にも似た面立ちで
決して可愛い泣き方もせず、
その男
幼児となって生意気に
おさがりは嫌だと駄々をこね
その男
友も作らず師も知らず
世話をかけるのは父母ばかり
その男
そのうち母死に父も死に、唯一好きな姉も死に
妻死に 最後は一人きり
その男のその昔
親父の八ミリに写っている
誰が写したか親父と二人
満面の笑みを浮かべていたが、
親父に髪を引っ張られ
味噌っ歯をむき出しで痛がって、
そのまま別の場面へ転換
その男のその昔
いつまでたっても
僻みっぽく、友人のふりをして仲間入り
知らず知らす
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)