残り香/あおい満月
 
悔しくて、悔しくて、悔しくて、
何度も、何度も、キスをする。
かなしくて、かなしくて、かなしくて、
いつまでも、いつまでも、抱きしめる。

別れが近づいていることが、
わかればわかるほど、
永遠を信じてしまう。
最後のぬくもりが忘れられない。

病室の窓から覗いた空に、
虹が架かっていた。
かなしいはずの色合いが、
やけに胸をくすぶる。

このドアを閉じたら、
鍵を返さなくてはいけない。
背を向けた向こう側の世界には、
もう二度と戻れない。

見つめる先には、
道が開かれているから、
ためらわずに進めばいい、
その願いに応える勇気が今はない。

雑踏のなかをあてもなく進む。
最後に背中を押してくれた、
少しつめたい手を握りしめて、
約束を閉じながらぬりかえていく。

破り捨てたページには、
読んではいけないことばが、
かかれていたはずだ。
少し煙草の残り香がしたその気持ち。


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