大皿の日々/佐々宝砂
わたしたちは一枚の大皿に住んだ
皿は基本的に何の模様もなく
真っ白な大地にところどころ土が盛られた
わたしたちはテントを張り
ひまわりを植え
にわとりを飼い
真っ白な地平線をながめた
地平のむこうには常に巨大な何かが霞んだ
大皿の生活は平穏で
たまに地震があっても
テントはテントに過ぎないので
恐ろしくはない
雨が降るほうが大変で
わたしたちは大雨が降るたびに
禁断の地平線近くに避難した
どうしてこの世界には地平線があるのか
地平線とはなんなのか
誰も疑問には思わなかったが
記憶に重大な穴があるのはみんなが知っていて
地平線に危なっかしく腰掛けるとき
うっすらと何かを思い出すのだった
地平のむこうには今日も巨大な何かが動き
わたしたちは大皿の上で生活に忙しい
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