ある日の献血/服部 剛
林の中を歩いていたら
3ヶ所を蚊に、刺され
むず痒さを耐えながら
ぎこちなくも、歩いた。
(もう会うこともなかろう、蚊の腹は
僕が痒い分、充たされたのか?)
思い巡らせ歩いていたら
痒みと同時に、妙な安堵を覚えつつ…
(でも、デング熱にはなりたくないから
明日の散歩は「虫よけスプレー」に頼るのか
それともぱちん、と潰すのか?)
我が内面に湧き起こる
〈自己愛〉と〈ささやかな優しさ〉を
秤にかけて、揺れながら
ぎこちない痒みのままに歩む、僕は
なけなしの血を捧げよう。
今日も
この地球という家の何処かを舞いながら
笑ったり、泣いたりしている
一匹の蚊。
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