陽子/レタス
とても胸苦しい
不快指数90%のそば屋で
おまえはもり蕎麦を啜り
俺は鴨南蛮を黙って啜っていた
お前は何時になく饒舌で
時々何を言っているのか解らなかった
それがお前の焦りだと知ったのは
秋風のたつ頃だった
陽子
意識不明だったお前が身体を震わせ
その瞳は宙を舞った
緑に光る生命曲線が次第に平坦になってゆく中で
俺は主治医と
ぼそぼそと語り
これで終わりですか
と
俺は聴いた
医師はなにも応えず
緑のモニターを指さす
静かな時が過ぎてゆく
次第に緑の線は平坦になってしまい
何も言葉にすることは無くなった
俺はお前の屍を見るとは思わなかった
戻る 編 削 Point(1)