扉/為平 澪
 
夜間にバタンバタンと 階下で扉を
開けたり閉めたりを繰り返す父の扉
私が玄関の扉を開けっぱなしにして遠方に去ってから
ずっと開いていた 扉

帰省する毎に 小さく細く白く可愛く寂れてゆく
玄関の扉の、隣には 父
出て行く時 必ず見えた扉と 茫然と見送る父の姿

夜間に限って階下でバタンバタンと
父は扉を開けたり閉めたり
二階では停電させたような部屋で娘は毛布を被っては
大河がうねるようなクラッシックを 耳を塞ぎながら
大音量で聴いている

私が泥棒に見える日、父は扉を閉めたがる
私が娘に見える日、父は扉を開けたがる
父が扉を締め切る日、
[次のページ]
戻る   Point(5)