香/レタス
その名は釈迦という
森羅万象に眼を奪われ
哀しみと美しさに
その眼差しを静かに落とす
彼は旅を続け
悲しみを喜びに変えて
今も我々を救済し続けている
彼は神や仏といった
遠い存在ではなく
我らと変わる者ではなかった
花を手にとり
命の儚さを言葉に変え
八万の経巻にあらゆる現象を尽くし
極微と極大の連なりを示唆した
彼は小鳥のような食事を採り
慈悲を伝え
未来永劫の
輪廻を解き
青い空に消えて往った
その残り香は
死の静けさを示す伽羅の香りであり
生の歓びを現す白檀の香りであった
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