タクシー/為平 澪
 
母を乗せたのぼりの電車 
母を乗せたのぼりのタクシー 
ペースメーカーの電池は音もなく 擦り切れて 
障碍者手帳と交付されたタクシーの補助券は 
どんどんなくなり  
彼女はもう どこにも行くことができない 
杖代わりだった私 
杖代わりだと思っていたかった私 
母の右手が私を手放した方向に 
若いころの同窓生の笑顔 
これがみんなに会える最後だって泣いていた 
その母の嬉し泣きか、悔し泣きか、私も知らない 
けれど 
同窓生も 若くない 
母を一瞥して 
「あぁには、なりたくないもんだ。 
コブ付きで自分の身も自分でできない恥を、 
さらしてまでも、みん
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