葬列の午後/レタス
次第に近く聞こえてくる潮音が
夏の間近にやって来た
汗ばむうなじをフェイスタオルで拭きながら
海沿いの路をトボトボ歩いて
バス停近くの
紅い暖簾の中華そば屋にたどり着いた
一息吐いて
ラーメンと餃子を頼み
寝そべるトラネコにシャッターを切り
煙草を吹かし
黒いネクタイを外した
友の葬儀は約束のように終わり
軽石と化した骨を拾った
遅い午後の中華そば屋には客は無く
うねる波の音だけが店内に渦巻いていた
コップ一杯のビールをあおり
空に消えて往った友と最期の乾杯をした
ビールが好きだったお前は
ビールを飲み過ぎて風呂に溺れて往ってしまったのだ
いま互いに後悔しても始まらず
言いたいことなど無くなった
次は俺の番だと知っている
待って居てくれ
大きな樽を担いでそっちに行くから
トラネコが大きなあくびをした午後は
あまりに静かで
潮音と時計の秒針が聴こえるだけだった
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