闇夜、或いは月の朝/村上 和
 
闇夜、午前零時

ひらひらと
羽織っていた服を脱いで
部屋の中央に垂れた紐を引くと
パチンと音がして光が消えた
肢体を浮かべる闇は
今もどこかで葬式が執り行われている、
ということを連想させる

朝に出かけるために
その夜は始まる

静かな夜には必ず雨が降っていて
絶えず微かにひたひたと雨音がする
壁の向こうからするそれは
やがて足音になって
ひたひたと壁のこちら側
何もない床に横たわる私のすぐ傍で立ち止まる
水滴が私の顔をかすめて落ちる

なぜいなくなってしまったの?
と私から漏れる掠れた声
何も返してはくれない

私はそのまま雨音を抱いて眠りに
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