忘却/鷲田
 
春の日差しに照る光
影と陽の二重音奏は
日常というリズムを奏でている

自然の一つ一つに
咲き始めた根を張る花弁に
青空のキャンパスを渡る一片の白雲に
私達の一つの想いに
無数の生活に
重なり、成り立つ社会という大きな文明に

我を忘れた心境は自然と融合する
無意識の形が自然を成す
私が私を意識する頃
過ぎ去る日々は憂鬱の鎧を身に着けている

澄み渡る小川は
その水の流れを自然に作る
我を忘れよ
自我を忘れよ
山々は何も考えずに
悠然とした景色を形成している

キャンパスには風景画
自然は私達の心を描く透明な影
私達はリズムの一つ
自我と言う意識は
傲慢という思い上がりの産物

一片の花弁が風に舞う
ユラリ、ユラリと
ゆらり、ゆらりと
何も言わずに、何も語らずに
5月の陽射しはただその光のみで
言葉を失くしている
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