そらをおよぐ/あおい満月
 
冷たい壁の前で、
私は人形をにぎり立っている。
人形は、
いくら圧力をくわえても、
宙をおよぐ目をして
星のない空をみている。
私は昔から、
そんな目が嫌いだった。
何かを問われる度に、
あらぬ方向を向いて、
すり抜けていく人たちを、
撃ち殺したくて堪らなかった。

鏡にナイフを刺す。
ひび割れた境界からマリア像が映る。
マリアよ、あなたが赦すものが、
私には赦せません。
気がつけば、
手のひらが血まみれだ。
私はいつの間にか、
マジックで手のひらに、
十字架を描いてナイフを突きつけていた
自分の痛みにさえ気づかない魂が、
やがて他者を傷つけていく事に
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