まものみち/あおい満月
 
風が流れてこないから、
行き先がわからなくて、
佇んでしまう。
私にとって呼ぶ声そのものが、
道標だ。
声を含んだ風が流れてこない日は、
この指を切って赤い唾を流す。
赤い汁のなかには小さな、
海があって、
その海のなかのことばを探す。
海は音もなく白い壁に滴る。

白い壁をみつめていると、
どこからともなく声が聴こえる。
その声のする方へ、
ことばを探すために祈ると、
壁に一斉に文字があらわれる。
文字は不順列に、
花になりびっちりと生えている。
私はその文字の花をつかって、
ことばをつくりだす。

掴んだ花は刺のなかにあった。
痛みよりも先に、

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