向こう側/あおい満月
きいぷあうと、きいぷあうと、
誰かが叫ぶ。
きいぷあうと、きいぷあうと、
地から手が伸びてきて、
私の足を掴む。
きいぷあうと、きいぷあうと、
引き戻されたベランダからは、
いろんな人たちが、
忙しく動く姿が見えた。
きいぷあうと、きいぷあうと、
隔離された私からは、
数ミリの硝子窓の向こう側でさえ遠い。
きいぷあうと、きいぷあうと、
黄色いリボンに緑色の文字が浮かぶ。「KEEP OUT」
私は色をつけられて生まれてきた。
健全で適切な世界から、
弾かれて。
けれど、誰もがわかっていて、
私を外へ出したがる。
わかってはいるのだ、
この心さえも排除してしまうと、
闇が待っているということ。
きいぷあうと、きいぷあうと、
囁き声を踏みにじり、
私はそれでも前を向く。
きいぷあうと、きいぷあうと、
いつか必ず私を迎え入れてくれる場所が訪れる。
きいぷあうと、きいぷあうと、
雨が上がり、
雲が切れて、
光の梯子に世界が包まれる。
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