旅人の舟/服部 剛
 
さぁ、足許の川面に揺れる
一艘の舟に乗ろう。
(自らの重みをぐぃ…と下ろして)

誰かが置いていったまま
傾いた左右の艪を、握り
今、漕ぎ出そう。

――旅の始めは、後回しにならぬよう

川辺の草々が風に靡いて、おじぎして
示す、未来の方角へ

(気紛れな向かい風の日々をも越えて)
時は、思いの外に遠くまで
君を運んでゆくだろう。  





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