旅人の舟/
服部 剛
さぁ、足許の川面に揺れる
一艘の舟に乗ろう。
(自らの重みをぐぃ…と下ろして)
誰かが置いていったまま
傾いた左右の艪を、握り
今、漕ぎ出そう。
――旅の始めは、後回しにならぬよう
川辺の草々が風に靡いて、おじぎして
示す、未来の方角へ
(気紛れな向かい風の日々をも越えて)
時は、思いの外に遠くまで
君を運んでゆくだろう。
戻る
編
削
Point
(4)