Miz 17/深水遊脚
 
はないと。」
「では早速」

言い終わるとすぐに光を帯びた柏木の右手の手刀が政志さんに放たれた。政志さんこれを交わし、すぐに数歩退いて間合いをとった。ソウル・シールドで盾状の板を作って構えた。ごく小さいもので素材は耐熱セラミックファイバーといったところか。そこにあまり力は割かなかったとみえる。政志さんはその盾に頼るよりは、柏木の手刀の一つ一つをよくみて交わしていた。交わしながら盾の影で軽く結んだ手のなかを、粘りのある光と熱を帯びた思念の糸で満たしていた。柏木の手刀の斬撃にタイミングを合わせ、光の糸が政志さんの手から伸びた。ライト・ストリングだ。それは柏木の手刀を放つ手に絡み付き、急激に温度を下げて固体になった。個体になったそれはソウル・ストリングと呼ばれ、鉄ほどの硬さがある。柏木が封じられた右腕をなんとか解放しようとあがいている隙に、政志さんはローキックをたっぷりと柏木に見舞っていた。拘束した相手への容赦のない攻撃は、柏木がよく用いる戦術だった。政志さんは柏木を怒らせているのではないか。そうとさえ感じる、不穏なファイトだった。
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