赤と黒/あおい満月
黒い鉛筆で、
目にうつるすべてを黒く塗りつぶす。
塗りつぶしたものたちは、
赤く染まっていく。
鉛筆が折れた。
血豆が潰れた。
赤い血が滲み出して、
白いテーブルに滴った。
テーブルは黒く染みている。
黒い内側は赤で、
赤い内側が黒なのか。
イコールで繋がれた、
ふたつの色は、
夜行性の鳥のように、
夜明け前の空を駆けていく。
母親の恋人が母親を拐っていく。
がりがりと鉛筆をかじりながら、
反抗してい私の願いが届いたのか、
恋人は銃で撃たれて即死した。
血が、流れていた。
血は、黒く染みていた。
母の腕のなかで恋人は乳飲み子になって
永遠に覚めることのない眠りに入っていった。
黒い鉛筆で、
紙を塗りつぶす速度が止まらない。
黒は永遠だ。
塗りつぶしても塗りつぶしても、
黒は黒くならない。
それどころか、
どんどん白くなっていく。
紙で指を切った。
赤い血が滲む。
紙の上に滴っても、
黒い川は濁流を続けている。
戻る 編 削 Point(1)