◎改行されゆく地平線/由木名緒美
 
蛹の中で身じろぎする幼生の
息遣いほどの微雨
清流に屹立する山岳の岩は
主たる寡黙な黙想に耽り
棲みつく生物たちの呼吸を内包する

母を疎う駄々としてか
広野に下りた者は口々に囁く
懐古こそを真先に捨てるべきだと
高層建造物の乱れ咲く理想郷で
梱包された生花に羽虫は雑音を奏で
人は化繊の作法で首を垂れる
ならば人工知能の祝慶を以って
雄山からの独立は果たされるのか
無機への完全なる源を見出して

アスファルトの亀裂からさやぐタンポポ
送電線の上に憩う鴉
地下水脈の午睡にまどろむ街で
路地から路地へと犬は尾をふり
平和の微笑みを瞳に映す
はぐれ者の給餌に寄り
[次のページ]
戻る   Point(12)