種/あおい満月
 
昨日今日明日、
きのうきょうあす、
くりかえして、
くりかえして、
私たちの雑巾はもうぼろぼろだ。
日々雑巾を絞る。
木綿糸で繋ぎ会わせた縫い目からは、
明日の台所がみえる。
絞る手のひらの皮膚は剥けて、
まだ冬の薄皮を纏う風に震える。
校舎の窓に雑巾を走らせる。
誰もいないはずの廊下を、
猫がかけていく。

美味しさと悔しさは紙一重。
テーブルの上に地図を広げて、
肉じゃがやほろふき大根や、
きんぴらごぼうを作ってみても、
あの母の味には届かない。
テストで百点を取ったときに、
作ってくれた春巻の味は、
今でも瞼の裏側の宝箱にしまってある。
今でも居間
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