黄色/あおい満月
めをこえて、
みみをこえて、
のめりこむ。
めりめり、のめりこむ。
目の縁の涙腺に沸いた黄色い虫が、
ぐるぐるまわる。
痒みは好奇心のうねり。
うねりを掻き立てる爪を、
追いかけても追いつかない。
爪は抜けて、
誰かの椅子の座り後が、
なまあたたかい。
のめりこむ、
のめりこむ、
めをこえて、
みみをこえて、
絡みついたみどりいろの
液体を切り裂いて。
声が出ない。
声は耳から切り離されて、
痛々しくも血にまみれた、
自由を乾いた風になびかせて、
のめりこむ、
のめりこむ、
空で、
黄色い虫と空の青が、
渦をまいておいかけっこをしている。
ブルーレットに流れている汚物の絵の、
あの赤と黄色と緑を混ぜ合わせた色は、
のめりこんだあとの脱け殻みたいだ。
のめりこむ、
ことばのレールを、
風がなぞっていく。
指で潰せば切れていきそうな、
黄色い虫が、
空へ向かって列をなす。
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