遠く深いものたちへ/あおい満月
 
鳥は、
空を空と名づけない。
鳥たちにとって空こそが、
果てしない大地だから。
鳥たちは、
彼らは翔ぶことを意識しない。
彼らは空を駆けている。
全速力で、遠く、遠く。

魚は、
海が海であることを知っているのか。
魚は海を名づけない。
魚たちにとって海こそが、
何よりも深い大地だから。
魚たちは、
彼らは泳ぐことを意識しない。
彼らは海を抱いている。
あらんかぎりのぬくもりで、
深く、深く。

人は、
空を空と名づけ、
海を海と名づけ、
そして大地を大地と呼ぶ。
ことばとは、
人だけにゆるされた、
鍵のようなもの。
その鍵をつかい、
人々は
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