心のかたち/あおい満月
石ころが、道の真ん中に落ちている。
いや、石ころは道の真ん中に立っているのだ。
彼には目も耳もなかった。
ただ、感覚だけが、
虫の触角のように鋭かった。
彼は大地の熱と風の愛撫を糧に生きている。
彼は自分の過去も未来も知らない。
風の声で今を悟る。
彼を乗せた大地は、
あたたかくも冷たくもなく、
体温のように一定だった。
ある日、一人の少年が、
石ころを拾って手に取った。
石ころには、耳が聞こえなかったが、
少年の手の温度と息づかいで、
また新たな旅ができると感じた。
少年は石ころをポケットにしまい、
家路を急いだ。
家に帰った少年は、
石ころをまじま
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