ほむらたび/あおい満月
 
燃えるもえる、
私が燃える。
街は安穏を保ちながら、
流れるながれる、
それぞれの岸に向かって。
燃えるもえる、
私が燃える。
私だけが燃えている。
人々は手を休めて、
それぞれの鏡を覗いている。
あの人たちのなかでさえ、
私には見えない何かが燃えている
はずなのに、
お腹に卵を抱えるようにして、
人々は誰もがみな、
やって来る何かをじっと待っている。

*

ごうごう、
と燃えながら走ってきてしまった私は、
(燃えるのをやめたい)
と樹木に訴えるが、
枝が私の髪を掴んで、
火の粉を弄ぶ。
(君は燃えていたほうがいい。綺麗だから)
樹木は幹から
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