初恋ライター/あおば
火を奢ってくれた
ありがとうございますと
最敬礼する私を気にせずに中年男は立ち去る
彼の親族かなにかの法事の途中か
それとも気まぐれか
普段着だから気まぐれか
まぐれでも良い
炎を上げるお線香を慌てて
掌で風を送って消すわたくしを
お地蔵様はにこやかに見守ってくださる
型どおりにお辞儀して合掌する
なんにも浮かばないから
無理してお地蔵様の由来を思い浮かべる
廃仏毀釈の明治の初めに捨てられたお寺から
こちらに派遣されたというお地蔵様たちは
僕らと同じようだけど
使い捨てにはされないんだよ
やっぱり、お地蔵様と言うだけあって
21世紀の世にも、手を合わせる人が多く
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