へどろの街/あおい満月
 
目の前に、
どろどろとしたへどろの塊のような、
いきものが現れる。
いきものは異臭を放ちながら、
目だけをぎょろぎょろさせている。
いきものは何も言わない。
よく見るといきものの身体には、
日頃街でよく見かける食べ物のパッケージのゴミ屑や、即席麺の切れ端や、
ビンの蓋などをぶらさげている。
それは私がたった今食べたばかりの
昼御飯に似ている。
いきものに近寄ろうとすると、
いきものはまるでマンホールに
溶けていくように姿を消した。

ある日別の街で、
またあのいきものの姿を見つけた。
いきものはシャンプーだか、
トリートメントだかの甘酸っぱい臭いを
なびかせて
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