門/服部 剛
門の前はひっそりとして
呆けた顔で、立ち尽くす
襤褸着(ぼろぎ)の男
雨の滴は、腕を濡らし
門柱に ぺちゃり と
白い糞はこびり、落ち
(この世を覆う、雨空に
数羽の烏は弧を描き
声は乾いて、木霊(こだま)する)
雨はざあざあ降り頻り
何処からか、ぬるい風は
人肉の腐臭を鼻腔に、運び
男の呆けた目の先に
頼りない一筋の
水墨画の道は
霞の掛かる幕の向こうへ
(光の門は…あらわれるのか)
いつしか門柱に凭れ、坐っていた
襤褸着の男は
開いた蜘蛛の掌で濡れた地べたを、押して
片膝をゆっくり立てた
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