さくらがい/あおい満月
 
生まれては弾いていく、
いくつもの過去たちの脱け殻の
奥には必ず触れなくてはならない
真実がある。
その横たわる真実の瞼の裏側の、
顔を見つめなくてはならない。

目を閉じた瞼の裏に映った顔は、
私ではない知らない別の誰かの顔で、
微笑みに似た色の瞳を向けてくる。
その彼女は何かをくわえていた。
青ざめた小さく細長い何かを。
よくみるとそれは指だった。
それも私がよく知っている小指で。

左手に痛みを感じて、
目を覚ますと、
左手の小指に、
何かに噛まれた赤い痕があった。
あの瞼の裏の少女。
私はすぐさま古い引き出しから、
小学校の頃の卒業アルバムを開いた
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