名も無き人へ/
服部 剛
旅先のホテルの部屋にて
机の上に置かれた一枚の紙
「この部屋は私が清掃しました
ゆっくりお過ごし下さい
〇〇」
名前のみが直筆の
見知らぬひとの心遣いが
残った部屋のベッドに
独り、腰を下ろす
心を込めてシーツを替えてくれたのか
お義理でバスルームを洗ってくれたか
幸福なひとなのか
孤独なひとか
この部屋の
見えない気配に
支えられた空間で
ぽつんと独り
〇〇さんに、礼を言う
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