鬼/為平 澪
 
母の頬を打つ
鋭い音が私の底に弾けて沈む
窓から漏れる灯が全て真っ赤に爆ぜる
影絵が暴れ出す
玄関口を喪服の村人がぞろぞろ出て行く
四角いお供え物に母の骨を携えて

母の頬を打つ音が隣の家に着火し
老夫婦はもう家に帰れなくなった
また、喪服の村人がぞろぞろと夜の玄関先渡って行く
四角いお供え物から、ピシャリ、という音が聞こえないように
大きな風呂敷袋にぐるぐる巻きにされた、その箱の底から血が滴っている
─あれが生首です。
影絵の物語はいつもそんな風に幕を閉じた

              ※

{引用=私が赤ちゃんを叩き殺した理由ですか
私わたしが赦せなかった
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