かぞえる/為平 澪
 
珠を数えている。
腕に通された木目の珠を。

祖母が亡くなったとき 
父が握っていた大粒の珠を、
父が四角い小さな石塔になったとき 
母の手首に引っ掛かった数珠の珠を、
数えている。

目が開いた時から数えていたのか、
数字というものを覚えたから数え始めたのか、 
わからない。
なのに、
随分と前から数えることがやめられなかった私。

数えている。
生きるために数えているのか、
死に切るために数えているのか、
長い夢の歳月の裾、
その、衣擦れが過ぎ去り
私の髪は白髪になり抜け落ち
骨と皮と皺の隙間から
数珠がするり、と落ちてしまう迄には
私は薄暗い朝を
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