すべて/竹森
 
が愛でる青は
緑の子を抱き
黄色い
声の響く先に
黒い板を用いて
白いチョークをこぼす

その
白いチョークの滓は
ビスケットの滓とまじり
午後1時のテーブルに
コーヒーは煙を立ち昇らせ
湿気た煙草は
6月の路上に淋しく泳いだ

死体を運ぶ列車に
とうに追い抜かれて渡り鳥は

踏切を
また
踏切を

なにごとも
なく

渡り

なにごとも
なかったかのように
死体は瓶に詰められ
出荷される

それは海を渡り
それは誰かの首筋をぴたりと撫で
それはオフィスの書類にまぎれて
苦しいのは
あなただけではないからと
顔のない人たちを慰めるのだろう

ここから
はじまったすべては
ここに置いて
このまま
はじまらなかったすべてだけが

ここから
あなたが
持ち出せる

すべて
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