足並み/為平 澪
 
 私はカルピスのいちごオーレの底にたまった沈殿物。
五百ミリリットル入っていても果汁は一パーセントにも満たない。
濃いピンクのふりをしても、先生たちは私のことを講堂に響く大きな声で、赤点、ギリギリだったという。そういうことは“だいたい”で、いいらしい。
 私の個人情報が薄汚い口髭の男から、交流会館のキレイな受付嬢に銀行振込を
されていく。“だいたい”の、料金で。
 赤いベストの黒い丸渕眼鏡のおじさんは封筒を大事に抱えてNPO法人行きの
切符を窓口で買う。行先は白く一人。帰りは黒く独り。もう乗客席に座る足も、
持たないままで。
 私が得体のしれない沈殿物だった頃は珍しがっていたのに私
[次のページ]
戻る   Point(7)