散乱/田代深子
 
酔い に驚いている走り 続ける青年の様態は
フレームの中央から動くことはない ただ 陽の傾きだけうつろう
この身体もいつかどこかでリレーされるのか おめでとう時間は 
あけていく つぎ へつぎのところへ グラスを干してまたつぎ 
またあけわたしたちは新ためた衣服と身体をまとう 加速と減速の
くりかえしをついで息は白くやはり 光り透けるのだろう

ゆきとどかない些末の一筋が足指を刺しつらぬ き凍土に血がかよ
いしっとりとぬくもり延長が身体を超えていって も声を抑え て
しまう声を惜しみ陽の散乱 わたしたちは朝の酔いに驚きぬくもっ
た絨毯に微睡みよこたわってかまわない 走る 速度も距離も裡へ
と延長するえんえん カーブの遠心力はつづく身体は外へ 外へと
牽かれながら中心で 眠りにつなぎとめ られ ている おはよう
 おめでとう冷えたビールの 黄金いろ液晶を映す切り子のグラス
につぎたされふくらみあふれ ああ という呼気もどうやらついに
 あふれ 光り膨潤しながら 透けていく



2005.1.16



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