名前 /
服部 剛
在日コリアンの金さんは
日本語学校で覚えた
自分の名前を、漢字三文字
ゆっくり紙切れに書いて
少々照れつつ、こちらに見せた。
三十九年生きてきた、僕は
すっかり忘れていた。
自分に名のある歓びを。
もう一度、ノートを開く。
筆ペンを、手に持つ。
白紙の真中に姿をあらわす
私の名前を、じっと視る。
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