◎セキレイの行方/由木名緒美
虹色のセキレイが飛ぶのは
深夜だけと決まっている
この街は朝が早過ぎて
人々は象形文字を象るように雑踏を行き交い
必要があれば空を見上げる
雨垂れが首筋を打ったとか
紫外線予防にぬかりはなかったかとか
彼等の体内にオーロラは揺蕩っているのに
ほとんどの人はその存在自体が冗談であるかのように
鼻で笑うのだった
虹色のセキレイがいないかと
深夜のコーヒーハウスの窓から
暗い夜を見上げる
熱いマグから立ち昇る湯気が
一瞬の変化の後、ナスカの地上絵を象り静止した
三秒・・・五秒・・・
尾の長いその鳥は完璧な翼を保っていて
今にも鋭く泣き声を上げそうな威風がある
写メ
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