ある日/鷲田
石の言葉は無音だ
叫びが無く
訴えも無い
ただ、冷たい地面に向き合い
ジッと座っている
荒地の中でもアスファルトの隅でも
空の意志は純粋だ
無念が無く
欲望も無い
ただ、澄み渡る頭上で
ジッと浮かんでいる
街の上でも世界の果てでも
山の態度は静寂だ
笑顔が無く
悲しみも無い
ただ、樹の茂みの中で
ジッと佇んでいる
夜の闇でも陽光の下でも
砂浜の呼吸は透明だ
虚しさが無く
喜びも無い
ただ、風が吹く浜辺で
ジッと観察している
朝焼けの中でも黄昏の彼方でも
冬の人々は不器用だ
生があり
衝動がある
ただ、日々の暮らしの中で
イソイソと動いている
雪の日でも
立春が挨拶するこんな晴れた日でも
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