老師の祈り /服部 剛
焙じ茶を飲む、向かいの空席
ふいに 誰か の気配があり…
在りし日の老師は
日々 南無アッバ を唱和した
目には見えない 誰か とは
――もしかしたら、お釈迦様?
――もしかしたら、イエスさま?
――あるいはもしや、親しき死者?
老師が天に昇った、あの日から
南無アッバ を唱えれば
風は吹き
涙の夜の傍らに、つき添う 誰か
ここぞの機会の到来に、背を押す 誰か
姿も無いのに
何故かふつふつ…想いのほとばしる
(アッバの世界)の領域に
僕は自らの存在をまるごと――投じます
この人生という、仮の宿にて
天の想いをそっと開く
一輪の、すみれの花になるように
戻る 編 削 Point(2)