鼻の鏡/あおい満月
脊髄の奥から、
おずおずと孔が湧いてくる。
孔は私の声になり、
私の体は大地へとひっぱられる。
手のひらに痺れを感じて、
見てみると黒い孔たちが、
もくもくと煙をたてて、
涌き出てくる。
私の身体の、
孔という孔から、
黒い孔がわき出てくる。
私は為す術もなく立ち竦む。
気がつけば黒い珈琲を見つめていた。
珈琲にうつりこむ私の、
目の奥の孔から孔がこぼれる。
地下道で解れた裾を縫っている。
私の鼻には鏡がある。
鼻の鏡はじっと私の鼻を見つめる。
大きくなる鼻の鏡は、
やがて目になって私を食べていく。
じゃりじゃりと砂を噛む、
前歯の音だけが、
誰もいない夜の台所に響く。
孔が溶かされてまた違う孔が湧いてくる
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