血の笑う声/あおい満月
骨をくわえた、
私になった犬はどこへ消えたのか。
犬は私になったのか、
私が犬になったのか、
窓辺から不意に現れた犬の、
口にくわえられた骨には、
長い髪の毛が絡みついていた。
髪の毛は海の水に晒されたかのように
金色に光輝いていた。
昔、
この場所から数千キロ離れた、
ある国で、
ひとりの女が殺されるという
事件があった。
女は紺碧の瞳に、
長い金色の髪をしていたという。
女の遺体には、
数十ヶ所に及ぶ何者かに噛みつかれた
痕があった。
歯形からして、
動物ではなく人間のものだった。
噛み傷だらけの女の唇は、
カッターにより三日月に切られていた。
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