真冬・空をまねる営み/橘あまね
呼吸をさまたげるぬるい真綿と
つめたいくさび
命には届くまいと言い聞かせて
悲しみが訪れてくれるのを待つ
何もかもを涙に流せる静謐
繰り返しの記号がとめどなく
胸腔を破ろうとさわぎ
神さま、ぼくはいけない子どもだったでしょうか
赦されない罪はどこからくるのでしょうか
手首に巻いた聖母のかたちの装飾を
なぞるための指先は指先から失われ
何もかもは架空
この鼓動さえも雪色の幻視にすぎないとしたら
輪郭を作り替えられてゆく痛みは
どこまで追いかけてくるだろう?
ただしく交易されるはずの気体たちは
行き先を見失って
母をさがす乳飲み子の声で
けだものに食われると
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