◎漂流の窓/由木名緒美
宙に浮かんだ多面体の器を
銀河の零した蒸留水が満たしている
捧げる願いは光線となり壁面を通過する
その中で胎児のようにうずくまり
あらゆる業と宿命を反芻したかった
見上げる夜空に散らばる光が
セラミックの残骸ならば
幼い頃に地面を探って集めたプラスチック片のように
偽りのダイアモンドが普遍の価値を覆す
意味付けは時として残酷で
あなたが偽りなく真意を説く程
真実は亀裂を鮮やかに映し出す
四肢から滲む涙
生きている間は桃源郷の門が閉ざされていることくらい
知っておけば良かったのにね
自己愛は完結した瞬間 熱い体を引き離す
名を呼ぶ声に肌をそばだてて
唇を這う無欲の温もり
電気ケトルの蒸気に沈黙が潤う存在の追認に
互いの耳の震えを共有し合うのです
結露した夜の窓に姿は映らない
肩にまわされた腕が解く純粋な暗号を
深夜の黙祷に委ねたら
響き合うのは大きさの違う二つの心音
赤く燃える星々を宿して
溢れ出す生誕の餞(はなむけ)に
蝋燭はかすかな余命にその芯を震わせる
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