国旗/あおい満月
 
鍵穴を覗く。
覗くと誰かと目があった。
誰かには見覚えがあった。
きれながの、
左目だけが妙に大きい。
それは私の目だった。
鍵穴の向こうに、
もうひとりの私がいる。
そんなはずはないと、
呼吸を整えてもう一度、
鍵穴を覗く。
鍵穴の奥の私は、
どんどん殖えていく。

がりり、
音がしてドアが開く。
そこには鋭い光を放つ月を
手にしたたくさんの私が、
私に襲いかかる。
たくさんの月の刃が、
私の皮膚を切り裂く。
私は手にしたガソリンを
たくさんの私にぶちまけ、
ライターで火を放った。
たくさんの私たちは、
蝋燭の蝋のように溶けていった。

私の
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